就労ビザの申請実務で頻出する質問と回答例
(出入国在留管理庁申請は個別審査です。回答は一例です)
日本人学生の採用では学歴や職務経歴に関する判断は企業に委ねられており、また労働法や最低賃金法の範囲内であれば単純労働を含めて自由に活動することができます。しかし外国人留学生の場合には下記の職種に注意が必要です。
単純労働の仕事を目的とした業務内容でないこと(出入国在留管理庁規定の範囲)
(例)
- 居酒屋・レストラン・喫茶店のホールスタッフ
- 店舗のレジ担当・販売業務・陳列・清掃スタッフ
- 縫製作業員・工場労働者・木工加工業務スタッフ
就労ビザでは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」への該当性が審査されるため、一般的には単純労働の業務では就労ビザ取得は困難です。
出入国在留管理庁の関連法に「該当する在留資格なし」の職種でないこと
- 美容系専門学校卒業者のヘア・メイクアーティスト
- 製菓専門学校卒業者のパティシエ(見習含む)
- 保育幼児教育専門学校卒業者の保育士
- 医療系専門学校卒業者の救命救急士
- ファッション専門学校卒業者のスタイリスト
- 美術系専門学校卒業者の漫画家・フリーイラストレーター
アニメ・ファッション・デザイン・食などの分野に関して、日本の魅力を世界に発信するクールジャパン戦略の一環で、ガイドラインの明確化の観点から具体的許可・不許可事例が紹介されています。
また2019年4月施行の「特定技能」制度により、業種が限定的ではあるものの、外国人材の就業可能範囲が拡大しています。
2019年4月より施行された「特定技能」制度を利用することで、これまで国内で就業できなかった産業分野でも国内で就業することが出来るようになりました。施行直後ということもあり、関連機関なども日々更新されています。最新情報は出入国在留管理庁のホームページでご確認ください。
日本食及び食文化の海外への普及を促進するため農林水産省は「日本料理海外普及人材育成事業」という制度を設けました。これにより調理師専門学校に通う外国人の卒業後の在留資格要件が緩和されました。 これまで、学校卒業後は帰国するしかありませんでしたが、国内の日本料理店で働きながら学ぶ場合には、特例で最長5年の在留期間延長が認められるようになりました。(2014年2月14日から)特例措置を受けるには、調理師専門学校と受入れ事業所(日本料理店)が実習計画を作成し、農林水産省の認定を受けることが条件とされています。認定後、在留資格を留学から特定活動に切り替えることができます。
在留資格は就労の制限があるもの、ないもので二分割されます。就労に制限がなく、単純労働を含めて日本人と同様に働くことができる5種類の在留資格があり、他の在留資格には制限があります。
出入国在留管理庁の関連法に「該当する在留資格なし」の職種でないこと
- 特別永住者
降伏調印前から居住する朝鮮・台湾人+子孫 - 永住者
一定の在留期間を考慮して法相が許可 - 日本人の配偶者等
日本人と結婚した外国人 + 子供 - 永住者の配偶者等
上記永住者と結婚した外国人 + 子供 - 定住者
上記に該当しない場合に特別に法相が許可
新しい在留資格「介護」は2017年9月1日より本格的な運用が開始されています。これまでの制度では介護現場で外国人が働くための在留資格が存在せず、高齢化によって人材不足が深刻化しており、就労者募集も盛んに行われているにもかかわらず外国人には門戸が開かれておりませんでした。法改正により在留資格「介護」が新設されたことにより、日本の介護福祉士養成施設(都道府県知事が指定する専門学校等)を卒業し、介護福祉士の資格を取得した外国人も介護職員として現場で働くことができるようになりました。
就労に関する在留資格を経営管理に関する在留資格に変更するためには、具体的に自身でビジネスができる状況を整える必要があります。具体的には日本国内で株式会社等の会社を設立し、会社設立登記の完了や、税務署への各種届出等が必要となります。また、営業にあたって許認可が必要な業務の場合には、各行政機関よりあらかじめ営業許可も取得しなければならなく、会社員としての在留資格を取得するよりも条件が複雑になります。また日本国内での会社経営は商業文化や習慣等も必要となるため、より慎重に計画を立てる必要があります。
日本での長期滞在が可能な在留資格を有している外国人が、母国から家族を呼び一緒に暮らすことは一定の条件が整えば可能です。在留資格「家族滞在」に関する詳細をお調べください。
ただ、条件の中には、留学中の本人を含めた家族が日本で生活をするだけの充分な資力があるかどうかも問われるなど、就労に関する在留資格を有している人と比較した場合には、「家族滞在」の在留資格を取得するハードルがあがってしまうことを考慮する必要があります。
以前は日本に長期滞在する在留資格を有した外国人が、一時帰国や海外出張などで日本を一時的に出国する際には「再入国許可」を出国日以前に出入国在留管理庁にて取得する必要がありました。しかし、法改正により近年では出国期間が1年未満である場合には再度日本に戻ってくるであろうと推測されることによる「みなし再入国」として扱われ、特別な手続きをせずに出国する事ができるようになりました。
ただし、みなし再入国としてみなされるのは1年未満の出国ですので、1年を超える可能性がある場合には、これまでどおり「再入国許可」を取得しなければなりません。
外国人が日本で就労するためには、「技術・人文知識・国際業務」などの就労に関する在留資格を取得するか、「日本人の配偶者等」などの身分に関する在留資格が必要です。就労に関する在留資格を取得する際には、業務に就こうとする内容に関する専門的な知識や技術などを取得していることが求められ、これらの専門知識・技術を学んだ学歴が重要となってきます。日本国内の学校を卒業する場合には大学・短期大学に加えて、専門学校でも業務内容によっては学歴として認められる場合があります。海外の大学等を卒業している場合にも基本的には、日本国内の大学等と同じように扱われますが、国家から認定をうけておらず「大学」と呼称しているだけのケースや、海外で専門学校を卒業したケースは学歴として扱われません。
外国人も日本人と同じように企業の労働者として雇い入れることは可能ですが、日本に滞在している外国人すべてに日本人と同様に就労が認められているわけではありません。とりわけ、日本独自の技術を研修生として学ぼうとする外国人は、就労ではなく「研修」としての在留資格を取得する必要がある点にも注意が必要です。また、原則的に外国人労働者には単純労働は認められていません。雇い入れようとしている外国人の就労資格及び在留期間、または新卒生採用の場合には学歴と学習内容の確認を行う必要があります。
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者を除き、現在保有している在留資格に規定された範囲内での就労に該当するかどうか、在留資格を変更しなければならない場合には変更申請の要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。
大学・短期大学・専門学校の授業の一環として行われる場合や、卒業後の就職活動ビザ(在留資格:特定活動)で滞在している場合であっても、研修活動として企業で働き、その対価で手当てや報酬を得る場合には「資格外活動許可」を取得する必要があります。外国人が有している在留資格が就労不可能である場合に、出入国在留管理庁にて資格外活動許可を受けることにより、1週間につき28時間以内の報酬を受ける活動が可能となります。しかし、今回のケースのように28時間/週を超えることになるインターンシップ活動の場合には、資格外活動許可を申請する際に通常求められる申請書類に加えて、教育の一環として行う研修の内容や報酬、留学生としての活動の遂行を阻止しない程度の活動であることを証明する書類を提出し、慎重な審査を受ける必要があります。また、資格外活動許可を受けた後も、外国人学生がインターンシップ活動を行っている期間中も定期的なインターンシップ出席確認や、業務内容に関する面談等を行うなど、企業任せにしない姿勢が求められます。
日本国内の大学・短期大学・専門学校の卒業を見込んでいる外国人留学生の採用を行う場合には、前述の就労に関する在留資格の取得要件に該当するかどうかを確認する必要があります。要件が整っていれば、外国人留学生の在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」等の就労に関する在留資格への変更手続きを進めることになります。在留資格の変更申請を行う場合には、就職先での職務内容と学校で学んだ専攻内容との関連性、企業の経営状況、職種内容や報酬等を総合的に考慮され、審査されます。3月に卒業が見込まれている外国人留学生の場合は、概ね前年12月頃から在留資格変更の受付が開始され、学校卒業までに在留資格変更の可否がわかるように考慮されています。
多額の学費を支払い日本の大学や専門学校で学びたいと願う留学生の多くが、卒業後に日本で就職したいという目標や願いを持っています。日本人学生と同じ環境で学び、また厳しい就職活動を経験した留学生の多くは、日本で働く事は金銭的利益を目的とせず、より深く日本文化や日本人とのコミュニケーションを学ぼうとする姿勢を有しています。また、離職を繰り返した場合に再就職先を見つけることが困難な事実もよく理解している外国人が多く、日本人社員よりむしろ外国人社員の定着率が高い企業さえ存在しているのが実情です。ただし、国や地域、本人の資質によって、役職や業務内容、給与面など留学生によって業務のモチベーションに影響する内容は様々です。採用試験の際にしっかりと会社説明会や面接試験を行い、相互の意識・目的をしっかりと理解しあって採用することが重要です。
就労に関する在留資格に限らず、どの在留資格についても申請案件の審査結果が「不許可」であった場合でも、その不許可理由によっては申請内容を訂正し、改めて申請をやりなすことが可能です。この場合、不許可通知の理由を正しく理解でき、再申請が行えるかどうかの判断は人事担当者や留学生本人で行わず、必ず専門家の判断に従うようにしてください。専門家が身近にいない場合には出入国在留管理庁内の相談担当窓口で無料相談サービスが受けられる場合もあります。申請した地方出入国在留管理庁にお問い合わせください。
留学生は原則的にアルバイトができません。しかし出入国在留管理庁にて「資格外活動許可」を受ける事により、一定の条件の下でアルバイトを行うことが認められています。就労時間等の条件の詳細については、資格外活動許可を受ける際に本人の旅券に貼付される書類に記載されていますのでご確認ください。なお、「留学」の在留資格保持者が資格外活動許可を得てアルバイトを行う場合は、夏休み等の教育機関の長期休業期間にあっては1日について8時間以内の資格外活動が可能です。入管法の他にも労働基準法に定められている各種条件の遵守にも配慮ください。
日本国内の大学・短大・専門学校等を卒業した学生で、業務に関連する学部・学科を卒業した人は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の取得が可能です。この場合、実務経験の各種条件がなくても在留資格を取得することができます。各学校で専攻した内容が従事する業務内容に関連している必要がありますが、業務内容との関連性が在留資格取得の為の申請書類(雇用理由書等)に文書にて記載説明できることが重要なポイントとなります。
記述:学校法人上田学園 津川 龍一
- 永井弘之『外国人・留学生を雇う前に読む本』セルバ出版 2013年(2013年初版)
- 中西優一郎『外国人雇用の実務』同文館出版 2014年(2014年初版)
- 佐野誠ほか『外国人のための雇用・受入手続きマニュアル』日本加除出版 2011年
(2019年9月一部改修)
監修:学校法人エール学園